視界が揺らいできた・・・何だか足元が覚束ないような・・・・・・あぁ、もう駄目だ・・・そう思った途端私は目の前が真っ暗になった。


鬼な私は如何ですか?





目を開けると何処かの天井が見えた。あぁ・・・そうだ、気を失って倒れたんだ。頭が痛いのはそのとき何処かに・・・差し詰め床にぶつけたのだろう。
どのくらい意識を失っていたのだろうか。起き上がって辺りを見渡せばここが仮眠室だということが分かった。きっと誰か優しい人がここまで運んでくれたんだなぁ・・・誰か知らないけどありがとう!!

でも一体誰がここまで運んできてくれたのだろう?
ぼんやりとした頭を揺り起こして思い出そうとすると、部屋に向かってくる足音が聞こえた。足音の主は伊丹先輩だった。
もしかして心配してくれたのかな?なんだかんだ言って先輩って優しい・・・

「貧血で倒れるとは警察官、もとい社会人として失格じゃねぇのか、刑事?」

前言撤回。優しくない。
先輩の言葉に顔をしかめた私に気付いたのか、先輩はもう一言付け加えた。

「体調管理がなってねぇっつってんだよ。」

ベット傍に座った。

「すみません・・・でも女の子って貧血起こしやすいんですよ。」
「仕方ねぇーみたいな反応するな。」

そういって頭を叩かれた。
よく叩かれるけど、いつもに比べたら加減してくれてるのかな?


「それで。調子はどうだ?」
「えっと・・・大丈夫です。・・・すみません。」
「何で謝るんだよ。っていうか、大丈夫じゃねーだろ。まだ顔色が悪い。」
「・・・・・・ちょっと頭がクラクラします。」

正直に言った私に先輩はそうか、とぼそっと呟いた。説教でもされると思っていたから拍子抜けだった。
そこから会話が途切れてしまい何となく気まずい雰囲気になってしまった。
ふと先輩の手を見ると怪我をしていた。かすり傷みたいだけどほんの少しだけ血が出てたみたい。
・・・・・・そういえば意識を失う瞬間にものすごい形相で私に駆け寄ってきた伊丹先輩を思い出した。その傷はそのときについたものだろうか。


「どーいうつもりだ?」
「・・・え?」
「まるで吸血鬼だな。」


私は無意識のうちに先輩の手についた怪我を舐めていた。何故そんなことをしたのかと問われると答えることができない。これは衝動だ。
それにしても、なんて恥ずかしいことをしちゃってるのだろう。
今更ながら後悔の念にかられる私だった。


まるで吸血鬼だな、
先輩の言葉が頭の中を木霊する。



「貧血なんです。」

先輩は黙って私を見つめる。

「血が足りないんですよ。」
「だったら・・・もっとやろうか?」

そう言って私たちは笑った。
貧血でクラクラする、視界が揺らぐ。けれどその心配はもう、いらない。



× colse






不思議系物語.
ハロウィンとは関係ないけど、吸血鬼というキーワードをもとに書きました.
(20071026)