桃色恋情




彼女に関して言えば、良い片腕を見つけたと思わなかったことはお世辞にもなかった。その遠慮無い物言いと、物怖じしない性格は気持ちの良いものであったが、彼女は人一倍お人好しであった。
それが彼女の欠点でもあったが、その欠点さえ霞むほどの精華にあふれている、そんな女性だった。

しかし、最近の彼女はどうも様子がおかしい。
凛とした態度で仕事に望んでいた姿が今は見る影もない。仕事上のミスも目に見えて増えていた。

どうもおかしい。しかし、彼女は何も言わなかった。
上司として、部下の悩みを聞くことも厭わない、むしろ悩みを打ち明けることで改善されるのならいくらでも聞いてやろうと思った。
残業するたびに彼女に付き合ってみたが、彼女は何も言わなかった。


だが、自分に何も出来なくとも、自分に出来ることはしてやりたい、最後の最後で差し伸べられた手は掴んでやりたい。
ただの部下、それも出来のいいとは言い難い部下にそこまで思うのは何故だろうか。


そうして私は気付くのだった。
いつの間にか彼女── ───に惹かれていることに。
気がつくと目で彼女を追ってしまうのだ。


親と子とまでは言わないものの、それなりに年の離れた若い彼女に惚れるとはどういうことだろうか。
幾つになっても恋とは理解し難いものだ。


恋は罪悪


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次こそラスト!
(20071107)