近頃寒い日が続いていた。そういえばインフルエンザも流行りだす時期だ。ついでに言えば、残業続きで心身共に疲れていた。そういうわけで私は風邪を拗らせてしまった。
苦い薬と甘い彼
幼い頃、風邪を引くと母親が優しく看病してくれたことを思い出す。スポーツドリンクや氷枕を用意してくれたり、夕飯は私に合わせて消化に良いものや熱々のお粥を炊いてくれた。そのお陰で栄養もきちんと摂れたし、安心して寝付けたから風邪の治りは早かった。
何より、病院で処方された粉薬が苦手な私のためにオブラートに包んで飲ませてくれたことが大きかったと思う。
あの忌々しい粉薬を上手く飲むことが出来なかった私は当然のことながら薬を飲むことを嫌ったし、今でもあまり飲みたくない。
オブラートに包んでくれた母の優しさと有難みに今更ながら実感する。
「でも今は私が全部やらなきゃいけないのよね」
咳きは止まらない
頭は割れるように痛い
鼻詰まりのせいで不快度指数は最高潮
「ぁー最悪」
何か食べるものでも作ろうとベットからありったけの力を振り絞り、冷蔵庫の前までたどり着き、扉を開けた。冷蔵庫のひんやりとした空気が心地いい。
「?何やってんだ?」
この部屋で聞えるはずのない声がし、思わず振り返える。するとそこには憲一さんがいた。
「あ、れ?幻聴プラス幻覚?やばい重症かも・・・」
「なにが幻覚だ!」
幻覚に殴られた・・・?
「近くに来たから寄ってみたらこうだ」
「・・・・・ぇ?本物?」
「当たり前だ!馬鹿!・・・おら、さっさと寝ろ」
幻覚・・・ではなく正真正銘、本物の憲一さんだった。
「何か食ったか?」
「ん・・・まだ・・・。作ろうと思って・・・」
「そうか」
お前は寝てろと念を押しながら憲一さんは台所に向かった。数分後、台所から電子レンジか鳴る音が聞えてきた。すると憲一さんはお粥を持って私のところに戻ってきた。
「ほら」
憲一さんは食え、と言わんばかりにお粥を差し出した。
「作って、くれたの?」
「・・・レトルトで悪かったな」
「!!ううん・・・有難う・・・」
レトルトのお粥はとても熱かったけど美味しかった。
それから彼は氷枕とスポーツドリンクの差し入れをくれた。どうやらここに来る前にコンビニで購入したものらしい。
「おい、。薬はどこだ?」
「そこの薬棚にあるけど・・・あんまり飲みたくない」
「はぁ?餓鬼くせぇこと言ってんじゃねェよ」
「だって・・・苦い薬より甘い薬のほうがいいじゃない」
そんな私を他所に憲一さんは見た目にも苦そうな薬の封を切った。
「う・・・苦そう・・・」
「煩ぇなー・・・ほら飲め!」
そういってオブラートに包まれた薬を渡された。
「包んでくれたの?」
「・・・さっさと飲め」
今日の憲一さんは優しかった。いつもは優しくないわけじゃない。口調はあいかわらず乱暴だけど今日の憲一さんは優しかった。なんだか・・・お母さんみたい。・・・なんて言ったら怒られそうだ。
そんな優しさを噛み締めながら薬を水で流しこんだ。
「そろそろ帰るぞ」
「ぇ、うん。有難う。仕事中なのに・・・」
「・・・終わったらまた来るから」
ポンと私の頭に手を置いて憲一さんは家を出た。
「また来る、か」
その言葉が頭の中に響き、ニヤケが止まらなくなった。甘い彼が見れるのなら風邪もたまにはいいかも。そう思いながら憲一さんが来てくれるまで少し寝よう。
伊丹んに看病させてみた.
仕事中、さんが気になって仕方がなく使い物にならなかったらイイ.
実は芹&三浦さんに行って来い!と言われてやってきた、みたいな経緯だともっとイイ.
(20071130)