唇が荒れだす季節、真っ只中。
女の子はリップクリームやら口紅やらを常に持ってて、ふとした瞬間に塗る。
唇が荒れてるのって嫌だもの。ガサガサして、酷くなったら割れてきちゃう!そうなったら痛い。
なのに・・・どうして男の人ってリップクリームを塗らないのかしら?



!!



「・・・ガサガサ」
「何が」
「伊丹先輩の唇が」

資料整理をする私と伊丹先輩。
少し整理に飽きてきた私はふと隣で文句を言いながら作業をする先輩の顔を見た。
眉間に寄せた皺は相変わらず。怖い顔だと周りは言うけれど、私はそんな無愛想な顔も大好き。そしてこの無愛想な顔が厭味ったらしく笑うときも、照れて赤くなるときも。
そんな伊丹先輩の顔を盗み見してると、唇がガサガサになっていることに気がついた。

「リップとか塗らないんですか?」
「なんで男がんなもん塗らなきゃいけねぇんだよ」
「割れたりしません?」
「舐めときゃ治る」

・・・舐めたら余計に酷くなるんじゃないのかな?そう思っていると無駄口叩いてねぇでさっさと仕事しろ!と伊丹先輩に怒られた。自分だってブツブツ文句言ってたくせに!

「ぁ。でも男の人だってリップ使ってますよ?杉下さんとか・・・」

構わず話を続けていると伊丹先輩は目を見開いてこっちを見てきた。

「やっぱり出来る男は身だしなみもちゃんとしてるってことですよ」
「・・・」
「そもそも男がリップ使わない〜なんて時代錯誤もいいところですって・・・・・・伊丹先輩?」

終始無言の先輩を見れば無愛想な顔から不機嫌な顔に変わった。もしかして地雷でも踏んだ?!
そして、伊丹先輩のちょっと怖い不機嫌な顔がだんだん近づいて・・・って!!なんで近づいてくるのよ!!!!!!!
反射的に体を引こうとしたけど、いつの間にか腰に回されていた腕によって身動きが取れない。顔を背けることも出来ない、ただ硬直するしかなかった私の唇に生暖かいものが触れた。

「え、っと・・・っ!!」

思考を取り戻す暇も与えず、本日2度目のキスをした。否、唇を無理やり奪われたという表現の方が正しい気がする。
優しい口付け。普段は荒っぽい癖になんでこんなに優しいキスが出来るのだろう。そしてちゅっ、と音を立てて二人の唇が離れた。

「こうすればリップを持ってなくてもいいだろ?」

そういって嫌らしい笑みを浮かべる伊丹先輩の唇には淡いピンクのリップが薄っすらと付いていた。

「わ・私はリップの代わりですか?!」
「ぁーうるせぇ・・・、代わりなんてお前以外にいねぇよ」

その日以来、私は伊丹先輩とことある毎にキスする羽目になるのでした。



***おまけ***

芹「あれ?先輩、リップ塗ってんっスか?」
三「どうした?らしくねぇなー」
伊「お前ら、出来る男は身だしなみもちゃんと整えてるもんだぜ〜!!
  なぁ??」

(・・・この人、根に持つタイプだな・・・)




× colse





王道ネタ(?!)de伊丹ん(偽)でした.
(20080210)