「すごい星空ですね・・・」
は窓から見える星空を見ながら溜息交じりの声でそう呟いた。
都会では星が見えないというけれど、今日は何故だか美しい星空が頭上に広がっていた。
「七夕だから、か?」
「そっかー七夕かぁ。もう織姫と彦星は会えたのかな〜」
いい歳した大人が何を言ってるんだ、と言いそうになるのを堪えて自分も空をじっと眺めた。最後にこうして空を見上げたのはいつのことだろうか。
蒸し暑い夏、寄り付く蚊が鬱陶しいが時折吹く風が気持ち良かった。
「好きな人と1年に1回しか会えないなんてやっぱり可哀想ですよねー。
もし先輩は1年に1回しか好きな人に会えなかったらどうしますか?」
「急になんだよ」
「なんとなくです」
「そうだな。1年も会わねぇっていうんなら・・・冷めるだろうな。」
「・・・それひどくないですか?」
は少し頬を膨らませながら言った。
「お前がそんなに怒ることじゃねーだろ」
「・・・先輩ってほんっとデリカシーないですよね!」
「悪かったな、デリカシーがなくて。俺は正直者なんだよ!」
何が正直者よ、そう口を尖らせて拗ねるを見てつい吹き出す自分がいた。
「・・・先輩もそんなふうに笑うんですね」
「どういう意味だ、コラ!」
「だって、いつも無愛想じゃないですか」
「刑事がヘラヘラ笑ってたら可笑しいだろーが!」
「でも、先輩の貴重な笑顔が見れて良かったです」
そう言いながら笑うを見て俺は不思議な安心感を覚えた。それからいろいろな話をした。といってもが一方的に話していたのだが。
「おい、こんなところで寝たら風邪ひくぞ」
は疲れたのかウトウトし始めた。
「夏だから大丈夫ですよ。ちょっとだけ・・・仮眠してもいいですか?」
許可を出す前には寝息をたて始めた。溜息をつきながら自分の着ていた上着を脱ぎそっとかぶせた。スヤスヤと眠るの寝顔を見てたら何故か幸せな気分になった。
もし、こいつが織姫だったら1年待つのも悪くない・・・かもしれないと思ったそのとき、俺は に恋をしたのだ。