世界は君のためにある
そんな言葉を囁かれても嬉しくない。こんな醜い世の中が私のためにあるとでも言うのだろうか。世の女たちは何故こんな言葉に酔いしれるのか不思議で仕方ない。
思った言葉をありのまま男に伝えると、ある者はロマンがないと言い、またある者は冷たいと言う。でも、私は夢もロマンも全く持ち合わせていないのかと問われると、答えはNOだった。
恋愛小説に描かれるような恋にも憧れるし、ドラマの中の俳優のように愛を囁かれたいと思う。
けれど『世界は君のためにある』という言葉がどうしても欺瞞に満ちているように感じてならなかったのだ。
「世界は君のために、か。」
この人は今まで付き合った男性と一味も二味も違った。けれどこの人もあの人たちのように同じ言葉を私に囁くのだろうか。
「ちゃんはこの世界と僕の世界どっちが欲しい?」
「えっ・・・・・・えっと・・・・・・いきなりですね。」
この世界と僕──小野田さん──の世界。
別にこの世が欲しいわけじゃないし手に入るものではない。けれど、小野田さんの世界なら欲しい。地位、名誉を持ったこの人の外側だけではなく、内側が見たい・・・否、欲しい。
そう願うのは我侭だろうか。
「僕の世界が欲しかったら・・・、君の世界を頂戴。」
恋をすれば皆、我侭になるのかもしれない。
私も、小野田さんも皆。