「幸福って何だろうねー」
幸福。それは心地よく人の心を包むもの。
幸福のかけらはいくつでもある。ただ、それを見つけだすことが上手な人と下手な人がいるようだ。
「私は幸福なのかなぁ」
「さっきまで鼾かいて寝てた奴が言う台詞かぁ?」
「い・鼾?!嘘!!」
青柳さんはふっと笑って嘘だよ、と言う。
「何で急にそんなこと思ったんだよ」
「んー・・・なんとなく?」
幸福も不幸も、ひょっとしたらその人自身が作るものではないのか。そして、人の心にたちまち伝染するものではないのか。
刑事という職業柄、人々の心の闇とでも言うべきものをしばしば垣間見る。不幸が不幸を呼ぶかのように犯罪を犯す人々。
そんな闇を見つめていると自分も少し“あちら側”に行ってしまうのではないかと不安になる。
「お前が不幸だとしても、幸せなんて自分の手で引寄せられるもンだろ」
幸福を呼ぶ・・・というより引き寄せる、か。
あぁ。ほんと青柳さんらしい言葉だな。
人間同士のつき合いは心の伝染、心の反射が全てだ。好き好んで、不幸な気持ちの伝染・反射を願う者がいるわけがない。
同じように幸福は自分の心にも反射するが、また、多くの人々の心にも反射すると思う。
だから、私は青柳さんが引き寄せた幸福が伝染してるのかもしれない。そして私自身の力で幸福を引き寄せることができれば、青柳さんもその幸福が伝染してほしい。
「じゃあ私が幸せを引き寄せて、ついでに青柳さんも幸せにしてあげますよ!」
「お前に幸せ貰うほど不幸でもねぇよ。つーかそういう台詞は男がいうもんだろ?」
「だって青柳さん、そういうの言わないじゃない」
憎まれ口には憎まれ口で。
そんな私に青柳さんは独特な笑みを見せて言う。
「・・・お前がもうちょっと大人になったら言ってやらねーこともないぞ」
いじわる。
・・・・・・。
あぁ。やっぱり私は幸せだ!