「主任ってヘタレですよね」
「いきなり君は何を言いだすんだ」
はそうボソリと呟くと、やたら携帯電話を気にする主任──村瀬──は目だけをのほうへ向けて聞き返す。
少し怒ったような口調の村瀬に臆することなくは続ける。
「ある意味へタレ度はこの9係ナンバー1だと思います」
手元の本から目を反らすことなく淡々と。
それに対して村瀬は、のの態度、更に自分がヘタレだと言われたことに対する不快感を顕わにしていた。
「浅輪がいるだろ」
「浅輪君もヘタレですけど、主任の方がもーーーーっとヘタレですよ」
「私のどこをどう見ればヘタレなんだ!」
村瀬はよほど"ヘタレ"と言われたことが悔しいのか、あるいは不服だと感じたのか声が大きい。もようやく村瀬に目を向ける。
そして、今度は目を見てきっぱりと。
「だって主任はヘタレだもの」
にっこりと微笑むに村瀬は一瞬尻込みするも、答えになってない、ヘタレじゃない、主任として勤めを果たしている私のどこがヘタレだ、などと早口で捲し上げた。
「だいたい君は・・・」
話を遮るのは村瀬自身の携帯。
静かな部屋に響くメロディは村瀬の若くて可愛いフィアンセからだった。
「出ないんですか?」
「・・・・・・出るさ」
もしもし、と恐る恐る村瀬は電話に出る。
その次はごめん、今は仕事中・・・・・・言い訳の言葉。
「やっぱりヘタレですね」
村瀬に言い放ったは再び本に目を落とす。
電話の向こうのフィアンセは怒りを収まるどころが段々とヒートアップしている。
に言い返すことも出来ず、ひたすら村瀬は謝り続けるのだった。
だから諦められないんです
(くやしいけれど)
片思い.
title by リライト
(20081005)