午後の日差しが心地よい、とある晴れた日。人材の墓場と言われるここ特命係では今日もお茶会が開かれる。それはいつもと変わらない、ゆったりとしたおやつタイム。
ただ、いつもと異なるのはそのお茶会メンバーが2人っきりということ。杉下右京とその部下である、二人っきりのお茶会だ。
少し休憩しましょうか、の一言で今日もお茶会が始まる。右京は紅茶を、はお菓子を用意する。
「はぁーやっぱり右京さんの淹れる紅茶は最高っ!」
紅茶の匂いを愉しみながら一口飲んで笑顔が増す。そんなを見て右京もつい口元が綻ぶ。
「ところでさん、今日のおやつは・・・」
「じゃーん!これです!!」
がおもむろにボックスを開けるるとそこに入っていたのは小さなドーナツ。どうぞ、とは右京に勧めた。
「・・・」
「不味い・・・ですか;」
「美味しいですよ。」
「・・・マジですか?」
「マジです。」
よかったぁとはソファーにへたり込んだ。想いを寄せている上司に褒めてもらえただけでも嬉しい。しかも今日は二人っきり。
「ぁ。ドーナツで思い出したんですけど。」
「何ですか?」
「お菓子とかでドーナツの詰め合わせって売ってるますよね?
パッケージの裏に商品名とか製造日とか書いてあるじゃないですか。」
「そうですね。それが如何しました?」
「この前、おやつにドーナツを買ったときにふとその裏を見たら『製品名:油菓子』って書いてあったんですよ!!
ドーナツ=油菓子って書いてあるの初めて知ったんで、もーそれ見て思わず噴出しちゃって!!そりゃー油で揚げますけど、油菓子って無いですよねぇー・・・・・・」
ドーナツの話で一人話し続けたは急に言葉を止めた。不思議そうに右京はを見つめる。
「どうかしました?」
「ぁ、ごめんなさい。何かどうでもいいことずっと話しちゃって・・・」
いつもの会話のパターンを考えてみればが話し、亀山がその話に乗っかり右京に話を振り、右京は相槌を打つ・・・どうでもいいことばかり話してしまう自分はやはり憧れの・・・大好きな上司にとっては馬鹿なことを言う部下なのかもしれない。
折角こうして二人っきりでお茶できるのに・・・は俯き加減で紅茶を飲んだ。
「・・・さんの知らないこと、もう一つお教えしましょうか?」
「・・・なんですか?」
「僕は『どうでもいい』なんて思ったことはありませんよ。こうして愛しい人と二人っきりで過ごすことができる・・・それだけで僕は満たされるんですから。
何よりも贅沢な時間の使い方だと僕は思ってますよ。」
そしてに微笑んだ。傍に居るだけでこんなにも胸が苦しく、切なく・・・けれど嬉しい。そんな風に微笑まれるだけでは自分を保つことで精一杯になってしまう。
「さんはどうですか?」
「・・・へ?!」
「僕と二人っきりは嫌ですか?」
「まさか!!!・・・その、、、」
顔を真っ赤にして口篭る。しばらくして決心がついたのか、は顔をあげて続けた。
「・・・す・好きな人と一緒に居て嫌なことなんてありませんっ!!」
「知ってますよ?」
「へぇ〜・・・って!!えぇ?!」
「さんからその言葉を言ってくださるのを待ってたんです。これで僕たちは正式なカップルですね。」
そう言って右京は紅茶を飲みきった。ただ、はしばらく顔を真っ赤にして固まっていたそうだ。