ガリ、と靴底で何かを踏んでしまった。
足を上げてみると白い錠剤が砕けていた。
要らない紙で掬って捨てようとしたが、何か鼻先を懐かしいような、でもいつも嗅いでいるような・・・
そんな匂いが掠めて首を傾げる。・・・一体、何だろう?
桃色恋情フィロソフィー
“あの日”の残業以来、大河内さんと余計に目を合わせるのが辛くなった。照れるというのも理由の一つだけど、一番の理由は期待をしてしまうということだ。
“あの日”に私は期待するだけで何も努力していなかったことに初めて気付いた。今更、という気もするけれど。
兎に角、そんな気持ちを忘れるために仕事に没頭した。大河内さんが気になって仕方がなくて仕事が手につかなかった頃が嘘のようだった。
余計なことを考えなかったので仕事の効率も上がり、以前に比べればミスは少なくなったし、その分残業も目に見えて少なくなった。
だけど。
仕事をすればするほど、心は寂しくなるような気がした。
顔を見れば辛くなる、だから仕事に集中する・・・けれど大河内さんは私の上司だ。顔を合わせない日なんてほとんどない。
このモヤモヤした気持ちをどうすればいいのだろうか。
ふと上司を見れば、相変わらず不機嫌そうな顔をして例の白い錠剤を齧っていた。
そういえば、今朝私が踏みつけたあの錠剤は大河内さんの食べてるアレだったのだろうか?
期待するだけの私が嫌だった
久しぶりに話を進めました.
(20071107)